気密性能が低い家を建てた時の後悔とは?気密性能は暮らしにどのような関係がある? | 株式会社 八幡
気密性能が低い家を建てた時の後悔とは?気密性能は暮らしにどのような関係がある?
DATE 2025.04.24

気密性能が低い家を建てた時の後悔とは?気密性能は暮らしにどのような関係がある?

近年、住宅の性能に対する関心が高まり、特に「高気密・高断熱」という言葉をよく耳にするようになりました。断熱性能については、なんとなく「家の暖かさや涼しさに関係するもの」と理解している方が多いかもしれませんが、「気密性能」についてはどうでしょうか? 「気密」と聞くと、なんだか息苦しそうなイメージを持たれたり、その重要性がいまいちピンとこなかったりするかもしれません。

しかし、実はこの気密性能、住まいの快適性や省エネ性、さらには建物の耐久性や住む人の健康にまで深く関わる、非常に重要な要素なのです。もし、この気密性能をおろそかにして家を建ててしまうと、後々「こんなはずではなかった…」と後悔することになりかねません。

「冬は暖房をつけているのに足元がスースーして寒い」「夏は冷房がなかなか効かず、電気代ばかりかさむ」「窓の結露がひどくて、カビが生えてしまった」「外の騒音がうるさくて落ち着かない」…これらは、気密性能が低い家で起こりがちな問題のほんの一例です。

この記事では、そもそも気密性能とは何なのか、なぜそれが重要なのかを基本から解説します。そして、気密性能が低い家を建ててしまった場合に、具体的にどのような後悔が待っているのか、そして気密性能が高い家が私たちの暮らしにどのようなメリットをもたらすのかを詳しく掘り下げていきます。さらに、後悔しない家づりのために、気密性能を高めるポイントや、よくある誤解についても触れていきます。

これから家を建てる方はもちろん、リフォームを検討されている方、あるいは現在の住まいの快適性に疑問を感じている方も、ぜひこの記事を通して気密性能への理解を深め、より快適で健康的な住まいづくりのヒントを見つけていただければ幸いです。後悔しない家づくりの第一歩は、正しい知識を身につけることから始まります。

気密性能とは何か?その重要性を理解する

家づくりを考える上で、断熱性能と並んで近年非常に重要視されているのが「気密性能」です。しかし、具体的にどのような性能なのか、なぜ重要なのかを正確に理解している方はまだ少ないかもしれません。ここでは、気密性能の基本的な定義と、それがなぜ現代の住宅において不可欠とされるのかについて解説します。

気密性能の定義と指標 (C値)

気密性能とは、簡単に言えば**「家全体にある隙間がどれくらい少ないか」**を示す性能のことです。建物には、目に見える窓やドアの隙間だけでなく、壁と床の取り合い部分、壁の中のコンセントやスイッチ周り、配管や配線が壁を貫通する部分など、目に見えない無数の隙間が存在します。気密性能が高い家とは、これらの隙間が極めて少なく、意図しない空気の出入り(漏気)が少ない家のことを指します。

この気密性能を客観的に示す指標として用いられるのが**「C値(シーチ)」**です。C値は「相当隙間面積」とも呼ばれ、家全体の隙間の合計面積(平方センチメートル)を、その家の延床面積(平方メートル)で割った値で表されます。数式で示すと以下のようになります。

このC値は、数値が小さいほど隙間が少なく、気密性能が高いことを意味します。例えば、C値が1.0の場合、延床面積1平方メートルあたりに合計1平方センチメートルの隙間があることを示します。これは、家全体で見ると、ハガキ1枚分程度の隙間が空いている状態に相当します。

かつての省エネ基準では地域ごとにC値の基準値(例えば寒冷地で2.0以下、その他の地域で5.0以下)が定められていましたが、2013年の基準改正でC値の基準は撤廃されました。しかし、これは気密性能が重要でなくなったという意味ではありません。むしろ、計画換気の義務化などにより、高い気密性能が「前提」とされるようになったと捉えるべきでしょう。現在では、一般的にC値1.0以下が高気密住宅の一つの目安とされ、ハウスメーカーや工務店によってはC値0.5以下といった、さらに高いレベルの気密性能を標準仕様としているところもあります。

なぜ気密性能が重要なのか?

では、なぜ家の隙間を少なくすること、つまり気密性能を高めることが重要なのでしょうか。その理由は主に以下の4点に集約されます。

  1. 計画的な換気を実現するため: 現代の住宅は、シックハウス症候群対策などの観点から、24時間換気システムの設置が義務付けられています。この換気システムは、給気口から新鮮な外気を取り込み、排気口から室内の汚れた空気を排出することで、室内の空気質を清浄に保つ仕組みです。しかし、家に隙間が多い(気密性能が低い)と、給気口以外からも空気が勝手に出入りしてしまい、設計通りの空気の流れ(換気経路)が作れません。その結果、空気がよどむ場所ができたり、必要な換気量が得られなかったりして、換気システムが本来の性能を発揮できなくなってしまいます。高い気密性能があってこそ、計画的な換気が正しく機能するのです。

  2. 冷暖房効率を高めるため(省エネ): 隙間が多い家は、まるで穴の開いたバケツのようなものです。冬にせっかく暖房で室内を暖めても、その暖かい空気が隙間からどんどん外へ逃げていってしまいます。同時に、冷たい外気が隙間から侵入してきます。夏はその逆で、冷房で冷やした空気が逃げ、暑い外気が侵入してきます。これでは冷暖房が効きにくく、快適な室温を保つためにはエアコンを強力に稼働させ続ける必要があり、結果として光熱費が大幅にかさんでしまいます。気密性能を高めることで、外気の影響を受けにくくなり、少ないエネルギーで効率よく室内を快適な温度に保つことができるようになります。これは、高い断熱性能と組み合わせることで、その効果を最大限に発揮します。

  3. 結露を防ぐため(建物の耐久性維持・健康維持): 冬場に、暖かい室内の空気が壁の中などの冷たい部分に触れると結露が発生しやすくなります。気密性が低い家では、壁の中や床下、天井裏などに隙間から湿気を含んだ空気が侵入しやすく、断熱材の内部や構造材の表面などで「内部結露」と呼ばれる見えない結露を引き起こすリスクが高まります。内部結露は、カビやダニの発生原因となるだけでなく、断熱材の性能を低下させたり、柱や土台などの構造材を腐らせたりして、建物の耐久性を著しく損なう可能性があります。また、窓際などで発生する「表面結露」も、隙間風による室内の温度ムラや、換気不足による湿気の滞留が原因となることがあります。気密性を高め、計画換気を適切に行うことで、結露のリスクを大幅に低減できます。

  4. 外部からの汚染物質や騒音の侵入を防ぐため: 家の隙間は、空気だけでなく、花粉や黄砂、PM2.5といった微細な汚染物質、あるいはホコリや虫などの侵入経路にもなります。また、外部の騒音も隙間を通して伝わりやすくなります。気密性能を高めることで、これらの不快な侵入物をシャットアウトし、より清浄で静かな室内環境を保つことができます。特にアレルギーをお持ちの方や、交通量の多い道路沿いなどにお住まいの方にとっては、気密性能の高さは健康で快適な暮らしを送る上で非常に重要な要素となります。

このように、気密性能は単に「隙間が少ない」というだけでなく、換気、省エネ、建物の耐久性、そして住む人の健康や快適性に直結する、家づくりにおいて決して軽視できない重要な性能なのです。

気密性能が低い家で起こりうる後悔

家の性能について十分に理解しないまま家づくりを進めてしまうと、住み始めてから様々な問題に直面し、「もっとちゃんと調べておけばよかった…」と後悔することになりかねません。特に気密性能の低さは、日々の暮らしの中で多くの不満やストレスの原因となります。ここでは、気密性能が低い家を建ててしまった場合に、具体的にどのような後悔につながるのかを見ていきましょう。

光熱費がかさむ後悔:「こんなに高いなんて…」

家を建てて、あるいは購入して、多くの人が最初に直面する現実的な問題が「光熱費」です。気密性能が低い家では、前述の通り、冷暖房によって快適な温度にした空気が、家の無数の隙間からどんどん外へ逃げてしまいます。まるで、穴の開いた容器に水を注ぎ続けるようなもので、非常にエネルギー効率が悪い状態です。

  • 冬の暖房費: せっかく暖房で温めた空気が外に漏れ、同時に冷たい隙間風が室内に侵入してくるため、いつまで経っても部屋が暖まりません。設定温度を高くしても、足元はスースーして寒いまま、ということになりがちです。結果として、必要以上に暖房を強く、長時間稼働させることになり、暖房費が予想以上に高額になってしまいます。「最新の省エネエアコンを入れたのに、電気代が全然安くならない」といった嘆きも、気密性の低さが原因であるケースは少なくありません。
  • 夏の冷房費: 夏も同様です。冷房で冷やした涼しい空気が外に逃げ、窓を閉めているはずなのに、もわっとした熱気がどこからか侵入してきます。エアコンは常にフルパワーで稼働し続けなければならず、電気代がかさみます。「日中はエアコンをつけっぱなしにしないと、とても過ごせない」という状況は、家計にとっても大きな負担となります。

特に、近年注目されている「高断熱住宅」の性能を十分に活かすためには、高い気密性能が不可欠です。どんなに優れた断熱材を使用しても、隙間だらけの家ではその効果は半減してしまいます。「高断熱のはずなのに、思ったほど暖かくない(涼しくない)し、光熱費も高い」という後悔は、気密性能の重要性が見落とされた結果と言えるでしょう。毎月請求される高額な光熱費を見るたびに、「もっと気密性能にこだわればよかった」という後悔の念に駆られることになるかもしれません。

室内環境の不快さによる後悔:「家が一番くつろげない…」

光熱費の問題に加えて、気密性能の低さは日々の「暮らしの質」にも深刻な影響を与えます。快適であるはずの我が家が、実は様々な不快感の原因を抱えているとしたら、それは大きな後悔につながります。

  • 不快な温度ムラ: 気密性が低い家では、隙間風の影響で部屋の中に温度差ができやすくなります。暖房をつけているのに窓際はひんやりする、足元だけがいつまでも寒い、あるいは部屋の場所によって暑かったり寒かったりする、といった「温度ムラ」が発生しがちです。特に冬場の足元の冷えは、多くの人が経験する不快感の一つです。リビングは暖かいのに、廊下やトイレ、脱衣所は極端に寒いといった家の中の大きな温度差は、ヒートショックのリスクを高める要因にもなります。どこにいても温度が安定せず、常に不快感を感じる家では、心からリラックスすることは難しいでしょう。
  • 結露とカビの問題: 隙間が多いと、湿気を含んだ空気が壁の中や窓際などに侵入・滞留しやすくなります。これが外気で冷やされると結露が発生します。窓ガラスがびっしょり濡れる「表面結露」は見た目にも不快ですが、カビやダニの温床となります。さらに厄介なのが、壁の中や床下、天井裏などで発生する「内部結露」です。これは目に見えないため気づきにくく、知らないうちに断熱材を濡らして性能を低下させたり、木材を腐食させて建物の耐久性を損なったりする可能性があります。そして、結露によって発生したカビは、アレルギーや喘息などの健康被害を引き起こす原因ともなります。毎年のように繰り返される結露掃除の手間や、カビの発生による健康不安、さらには家の劣化への心配は、大きなストレスとなり、「なぜこんな家に…」という後悔につながります。
  • シックハウス症候群のリスク: 気密性が低いと、計画換気がうまく機能しないことは先に述べました。換気が不十分だと、建材や家具などから放散されるホルムアルデヒドなどの化学物質が室内に滞留しやすくなります。これが原因で、頭痛、めまい、吐き気、目や喉の痛みといったシックハウス症候群の症状が現れることがあります。特に小さなお子さんやアレルギー体質の方は影響を受けやすいため、家族の健康を守るという観点からも、気密性能と計画換気の重要性は無視できません。「新築の家のはずなのに、なんだか体調がすぐれない」という状況は、避けなければならない後悔です。
  • 外部からの騒音や汚染物質: 隙間は音の通り道にもなります。車の音、近隣の生活音などが隙間から侵入しやすく、静かで落ち着いた環境が得られません。また、花粉やPM2.5、排気ガスなどの汚染物質も侵入しやすいため、空気清浄機を常に稼働させなければならなかったり、窓を開けて換気することをためらったりすることにもなりかねません。

このように、気密性能の低さは、経済的な負担だけでなく、日々の快適性や健康、さらには建物の寿命にまで悪影響を及ぼす可能性があります。「安さだけで選んでしまった」「デザインばかり気にして性能を確認しなかった」といった油断が、後々の大きな後悔につながることを、家づくりを考える際には肝に銘じておく必要があります。

気密性能が暮らしに与える具体的な影響

気密性能が低い場合のデメリットや後悔について見てきましたが、逆に気密性能が高い家は、私たちの暮らしにどのような素晴らしい影響を与えてくれるのでしょうか。ここでは、高気密住宅がもたらす具体的なメリット、つまり快適で健康的な暮らしへの貢献について詳しく解説します。

快適な室温の維持:一年中、どこにいても心地よい空間

高気密住宅の最大のメリットの一つは、室内温度を快適に、そして安定して保ちやすいことです。隙間が少ないため、外の暑さや寒さの影響を最小限に抑えることができます。

  • 冬は暖かく、夏は涼しい: 高い気密性能と適切な断熱性能が組み合わさることで、魔法瓶のような効果が生まれます。冬は、少ない暖房エネルギーで家全体を効率よく暖めることができ、その暖かさが長時間持続します。一度暖まれば、暖房を止めても急激に室温が下がることはありません。夏は、外からの熱気の侵入を効果的に防ぎ、冷房で冷やした空気をしっかりと保持します。そのため、弱い冷房でも十分に涼しさを感じられ、快適な室内環境を維持できます。
  • 温度ムラの解消: 隙間風による不快な冷気や暖気の流れ込みがないため、部屋の中での温度差が非常に少なくなります。リビングはもちろん、廊下やトイレ、洗面所といった非居室空間との温度差も小さくなり、家全体が均一な温度に保たれやすくなります。「足元だけ寒い」「部屋の隅はひんやりする」といったストレスから解放され、どこにいても快適に過ごすことができます。
  • ヒートショックのリスク低減: 冬場の入浴時などに起こりやすいヒートショックは、暖かい部屋と寒い脱衣所や浴室との急激な温度差が原因で起こります。高気密高断熱住宅では、家全体の温度差が少ないため、このヒートショックのリスクを大幅に低減することができます。これは、高齢者だけでなく、すべての世代の健康を守る上で非常に重要なメリットです。

一年を通して、まるで春や秋のような穏やかな室内環境を維持できるのが、高気密住宅の大きな魅力です。暑さや寒さによるストレスから解放され、心身ともにリラックスできる住まいは、生活の質(QOL)を格段に向上させてくれます。

計画換気の実現と空気質の向上:キレイな空気で健康的な毎日

高気密住宅は息苦しいのでは?と心配されることがありますが、それは大きな誤解です。むしろ、高気密であるからこそ、計画的な換気が効果的に機能し、常に新鮮でクリーンな空気環境を維持できるのです。

  • 24時間換気システムの効率的な稼働: 高気密住宅では、給気口と排気口が明確に設計され、空気の流れがコントロールされています。換気システムを稼働させると、設計通りに外の新鮮な空気が給気口から取り込まれ、室内の汚れた空気や湿気、臭いなどが排気口から効率的に排出されます。隙間が多い家のように、意図しない場所から空気が漏れたり侵入したりすることがないため、家全体の空気がよどむことなく、常に入れ替わります。
  • 空気中の汚染物質の除去: 多くの24時間換気システムには、高性能なフィルターが装備されています。これにより、給気口から取り込む外気に含まれる花粉、黄砂、PM2.5、ホコリなどを効果的に除去することができます。気密性が低い家では、フィルターを通らない隙間からも汚染物質が侵入してしまいますが、高気密住宅ではその心配が少なく、室内の空気質を常に高く保つことができます。これは、花粉症やアレルギー、喘息などの症状を持つ方にとっては、症状の緩和につながる可能性があり、非常に大きなメリットとなります。
  • 結露やカビの抑制: 計画換気が適切に行われることで、室内の余分な湿気を効率的に排出することができます。これにより、結露の発生を大幅に抑制し、カビやダニが繁殖しにくい環境を作ることができます。清潔で健康的な室内環境は、住む人の健康維持に不可欠です。
  • 生活臭の排出: 料理の臭いやペットの臭い、その他の生活臭なども、計画換気によって効率的に排出されるため、家の中に臭いがこもりにくくなります。

高気密住宅は、単に隙間がない家ではなく、「計画的に換気を行うことで、常に清浄な空気環境を維持できる家」なのです。きれいな空気の中で深呼吸できる安心感は、何物にも代えがたい価値があると言えるでしょう。このように、高い気密性能は、快適な温度環境だけでなく、健康的で質の高い室内空気環境を実現するための基盤となるのです。

気密性能を高めるためのポイント

快適で省エネな暮らしを実現するために、気密性能がいかに重要かをご理解いただけたかと思います。では、実際に高い気密性能を持つ家を建てるためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。ここでは、後悔しない家づくりのために、気密性能を高めるための重要なポイントを解説します。

施工技術の重要性:図面だけでは決まらない性能

気密性能は、設計図面の段階である程度考慮されますが、最終的な性能は現場での施工の質に大きく左右されます。どんなに優れた設計であっても、施工が丁寧に行われなければ、目標とする気密性能を達成することはできません。

  • 気密層の連続性: 壁や天井、床に施工される「気密シート」や「防湿気密シート」は、家全体を隙間なく覆うことで気密性を確保する重要な部材です。これらのシートの重ね合わせ部分や端部の処理、柱や梁との取り合い部分などを、専用の気密テープやコーキング材を使って、隙間なく丁寧に処理することが求められます。少しの破れや隙間が、気密性能を大きく低下させる原因となります。
  • 貫通部の処理: 壁や床、天井などを貫通する配管(給排水管、換気ダクトなど)や配線(電気配線、アンテナ線など)の周りは、隙間が生じやすい箇所です。これらの貫通部に対して、専用の部材や気密テープ、パテなどを用いて、空気の漏れがないように入念に気密処理を行う必要があります。コンセントボックスやスイッチボックスの周りも、気密カバーを取り付けるなどの対策が重要です。
  • 開口部(窓・ドア)周りの処理: 窓や玄関ドアなどの開口部周りも、隙間が生じやすいポイントです。サッシと躯体(柱や壁)の間に隙間ができないよう、防水気密テープなどで丁寧に塞ぐ必要があります。また、断熱性能だけでなく、気密性能の高いサッシを選ぶことも重要です。
  • 基礎と土台、壁と屋根の取り合い: 建物の構造的な接合部も、気密処理が重要となる箇所です。基礎と土台の間、壁と床、壁と天井(屋根)の接合部など、構造的に複雑な部分の気密処理には、特に高い技術と経験が求められます。

このように、高い気密性能を実現するためには、細部にわたる丁寧で正確な施工が不可欠です。したがって、気密施工に関する知識と経験が豊富で、その重要性を理解している施工会社(ハウスメーカーや工務店)を選ぶことが、何よりも重要になります。契約前に、その会社の気密施工への取り組み方、標準的なC値の目標値、過去の施工事例や気密測定の実績などを確認し、信頼できるかどうかを見極めることが大切です。現場見学会などに参加して、実際の施工状況を確認するのも良いでしょう。

気密測定の実施:性能の「見える化」で安心を

設計や施工がいかに重要とはいえ、実際にどれくらいの気密性能が確保されているかは、完成してみないと分からない部分もあります。そこで推奨されるのが**「気密測定(C値測定)」**の実施です。

気密測定とは、専用の測定器を使って家全体の隙間の総量を実際に測定し、C値を算出する検査のことです。この測定を行うことで、その家の気密性能を客観的な数値として把握することができます。

  • 測定のタイミング: 気密測定は、主に以下の2つのタイミングで行われます。
    1. 建築中(中間時): 壁の内装工事を行う前、つまり気密層(気密シートなど)の施工が完了した段階で行う測定です。この段階で測定することで、もし目標とするC値に達していなかった場合、原因箇所を特定し、手直しを行うことが可能です。壁を塞いでしまう前に性能を確認できるため、非常に重要です。
    2. 完成時: 全ての工事が完了し、引き渡し前に行う測定です。最終的な気密性能を確認し、施主に対して性能値を報告するために行われます。 理想的には、中間時と完成時の両方で測定を行うのがベストですが、少なくともどちらか一方、特に中間時の測定は実施することが強く推奨されます。
  • 測定のメリット:
    • 性能の確認: 設計通りの気密性能が確保されているか、客観的な数値で確認できます。
    • 問題点の発見と改善: 中間測定で目標値に達しない場合、隙間の原因箇所を特定し、改善することができます。
    • 施工品質の担保: 気密測定を実施することが前提となっていれば、施工者側もより丁寧な気密施工を意識するようになります。
    • 施主の安心感: 自宅の性能を数値で把握できることは、施主にとって大きな安心感につながります。
  • 契約時の確認: 家づくりの契約を結ぶ前に、気密測定を実施するかどうか、実施する場合の費用負担、目標とするC値(保証値や努力目標値など)、測定結果が目標に達しなかった場合の対応などを、施工会社と明確に取り決めておくことが重要です。可能であれば、契約書にこれらの内容を盛り込むようにしましょう。「全棟で気密測定を実施し、C値〇〇以下を保証します」といった明確な基準を設けている会社は、気密性能に対する意識が高いと言えるでしょう。

気密測定は、いわば家の性能の「健康診断」のようなものです。目に見えない性能を「見える化」し、安心と確かな品質を手に入れるために、ぜひ積極的に実施を検討しましょう。

気密性能に関するよくある誤解

気密性能の重要性が認識されるようになってきた一方で、まだ誤解されている点も少なくありません。ここでは、高気密住宅に関してよく聞かれる誤解とその真実について解説します。正しい知識を持つことで、不必要な不安を取り除き、自信を持って高気密住宅を選ぶことができるようになります。

「高気密住宅は息苦しい」という誤解の真実

「気密性が高い」と聞くと、「隙間がないなら空気がこもって息苦しくなるのでは?」と心配される方がいます。これは、高気密住宅に関する最も一般的な誤解の一つです。しかし、この心配は全くの的外れです。

  • 計画換気の重要性: 現代の住宅には、建築基準法によって24時間換気システムの設置が義務付けられています。これは、室内の空気を常に新鮮に保ち、シックハウス症候群などを防ぐためのものです。高気密住宅は、この計画換気システムが最も効率的に機能するように設計されています。
  • 空気の流れがコントロールされている: 高気密住宅では、給気口からフィルターを通した新鮮な外気が計画的に取り込まれ、室内の汚れた空気や湿気、臭いが排気口からスムーズに排出されます。家の隙間が多い(気密性が低い)と、換気システムが意図した通りに機能せず、空気の流れが乱れてよどみができたり、必要な換気量が得られなかったりします。むしろ、気密性が低い家の方が、換気が不十分になり、空気がこもりやすいと言えます。
  • 隙間風がない快適さ: 高気密住宅では、不快な隙間風がありません。冬に足元がスースーしたり、夏にどこからか熱気が入ってきたりすることがなく、安定した温熱環境と空気環境が保たれます。
  • 適切な換気システムの運転とメンテナンス: もちろん、換気システムが正しく運転され、フィルターの清掃などの定期的なメンテナンスが行われていることが前提です。換気システムを止めてしまったり、給気口を塞いでしまったりすると、本来の性能が発揮されず、空気質が悪化する可能性があります。

結論として、適切に計画換気が行われている高気密住宅は、息苦しくなるどころか、常に新鮮で清浄な空気に満たされた、快適で健康的な空間なのです。「息苦しい」というイメージは、換気計画が不十分だったり、換気システムが正しく機能していなかったりする、過去の不完全な高気密住宅の事例や、単なる思い込みに基づいている場合が多いと言えるでしょう。

「古い家は気密性が低いのが当たり前」は改善できる

「築年数が古い家だから、気密性が低いのは仕方がない」「昔の家は隙間があって風通しが良いのが普通だった」といった声も聞かれます。確かに、昔の日本の家屋は、現代の基準から見ると気密性が低いものがほとんどです。しかし、それは「改善できない」あるいは「改善する必要がない」ということではありません。

  • リフォームによる気密性能向上: 古い家であっても、リフォームやリノベーションによって気密性能を向上させることは十分に可能です。特に、断熱性能を高める「断熱改修」と合わせて「気密改修」を行うことで、住まいの快適性や省エネ性を劇的に改善することができます。
  • 具体的な気密改修の方法:
    • 窓の交換: 気密性の低い古い窓を、気密性・断熱性の高い複層ガラスサッシや樹脂サッシなどに交換する。内窓を設置するのも効果的です。
    • 気密シートの施工: 壁や天井、床などを剥がす大規模なリフォームを行う際に、新たに気密シートを施工する。
    • 隙間の充填: 床下や天井裏、壁の隙間などに断熱材を充填したり、気密テープやコーキング材で隙間を塞いだりする。
    • 貫通部の処理: 配管や配線周りの隙間を丁寧に塞ぐ。
    • 玄関ドアの交換: 気密性の高い玄関ドアに交換する。
  • 気密改修のメリット: 古い家の気密性を向上させることで、冬の寒さや夏の暑さ、隙間風による不快感が大幅に軽減されます。冷暖房効率が向上し、光熱費の削減につながります。また、結露の抑制や外部からの騒音・汚染物質の侵入防止にも効果があります。
  • 「風通し」と「漏気」は違う: 昔の家が「風通しが良い」と言われたのは、主に夏場の暑さ対策として、窓を開けて自然の風を取り込むことを意図したものです。これは「通風」であり、コントロールできない隙間から空気が漏れ出す「漏気」とは全く異なります。気密性を高めた上で、窓を開けたり換気システムを活用したりして、計画的に空気の流れを作ることが、現代の快適な住まいには求められます。

「古い家だから仕方ない」と諦めるのではなく、リフォームによって気密性能を見直すことで、愛着のある住まいをより快適で長持ちする家に生まれ変わらせることが可能です。断熱改修などと併せて、気密改修も検討してみる価値は十分にあると言えるでしょう。専門家(リフォーム会社や断熱施工業者など)に相談し、自宅の状態に合った適切な改修方法を検討することが大切です。

後悔しない家づくりのために、気密性能の理解を深めよう

この記事では、「気密性能」という、家づくりにおいて非常に重要ながらも見過ごされがちな要素について、その基本的な定義から、低い場合に起こりうる後悔、そして高い場合のメリット、さらには性能を高めるためのポイントやよくある誤解まで、多角的に解説してきました。

気密性能とは、単に「家の隙間の少なさ」を示すだけでなく、計画換気の実現、冷暖房効率(省エネ性)、結露防止(建物の耐久性・健康維持)、外部からの汚染物質や騒音の遮断といった、私たちの暮らしの質に直結する多くの要素の基盤となる性能です。

気密性能が低い家を建ててしまうと、

  • 光熱費が予想以上にかさむ
  • 冬は寒く、夏は暑い、温度ムラのある不快な室内環境になる
  • 結露やカビが発生しやすく、健康被害や建物の劣化につながる
  • 計画換気がうまく機能せず、空気質が悪化する(シックハウスリスク)
  • 外部の騒音や花粉、PM2.5などが侵入しやすい

といった、様々な後悔につながる可能性があります。「デザインは気に入っているのに、住み心地が悪い」「省エネ住宅のはずなのに、電気代が高い」…そんな残念な結果を招かないためにも、気密性能の重要性をしっかりと認識することが不可欠です。

一方で、高い気密性能を持つ家(C値1.0以下、できれば0.5以下を目指したい)は、

  • 少ないエネルギーで家全体を快適な温度に保てる(高い省エネ性)
  • 家の中の温度差が少なく、ヒートショックのリスクも低減できる
  • 計画換気システムが効率的に働き、常に新鮮で清浄な空気を維持できる
  • 結露やカビの発生を抑制し、健康的で耐久性の高い住まいになる
  • 外部の騒音や汚染物質の影響を受けにくい、静かでクリーンな環境を実現できる

といった、多くのメリットをもたらし、住む人の快適性、健康、そして経済的な負担軽減に大きく貢献します。

後悔しない家づくりを実現するためには、以下の点を心がけましょう。

  1. 気密性能の重要性を理解する: 断熱性能だけでなく、気密性能がいかに大切かを認識する。
  2. 信頼できる施工会社を選ぶ: 気密施工に関する知識・技術・実績が豊富な会社を選ぶ。標準仕様や目標C値を確認する。
  3. 気密測定の実施を検討する: 可能であれば建築中(中間時)と完成時に気密測定を行い、性能を客観的に確認する。契約前に測定の有無や目標値を明確にする。
  4. 情報収集と比較検討: 様々な会社の情報を集め、性能や施工方法、保証などを比較検討する。

家は、人生で最も大きな買い物の一つであり、長く快適に過ごすための大切な基盤です。目先のコストやデザインだけでなく、目に見えない「性能」、特に気密性能にもしっかりと目を向け、正しい知識に基づいて判断することが、将来の満足度を大きく左右します。

これから家を建てる方、リフォームを検討している方は、ぜひ本記事で解説した内容を参考に、気密性能について深く考え、後悔のない、本当に快適で健康的な住まいづくりを実現してください。



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